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江戸八景について

2008-12-06

今、当館の特別企画展では「広重―江戸近郊八景展」を開催中ですが、前回は「長崎八景」を取上げ、八景シリーズが続いております。

八景というと、近江八景や金沢八景などを思い浮かべる方も多いと思いますが、日本画の題材として各地方の風光明媚な風景と地名を取り入れた八景物は、江戸時代から好まれてきました。

八景物とは、元々中国の北宋の時代(11~12世紀)に成立した画題である「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」に倣った八種の風景を描いた浮世絵のことです。

江戸八景は、身近な江戸の風景を取上げ、そこに伝統的な主題のイメージを重ね合わせた揃物ですが、江戸の名所8ヶ所の選択には定型はなく、作品によって描かれた場所は異なっています。

江戸八景と同様の内容として「江都八景」や「東都八景」との表記作も多く、浮世絵界での早い時期の代表作では鈴木春信の「風流江戸八景」や鳥居清長の「江戸八景」、歌川豊春の「浮世江戸八景」等があります。また、銅版画風の洋風表現を試みた葛飾北斎の「北斎先生画 阿蘭陀画鏡 江戸八景」という力作もあります。

広重は、「江戸近郊八景」を始め、「東都八景」「江都八景」「隅田川八景」「東都司馬八景」「名所江戸八景」等の多くの江戸の八景物を描いています。

絵師それぞれに工夫を凝らした揃物の「江戸八景」では、江戸時代の風景や風俗、江戸人の粋の部分を見ることが出来ます。