山本美術館 > ブログ > ほうそう(疱瘡)絵・赤絵

ほうそう(疱瘡)絵・赤絵

2009-03-04

古くから恐れられていた伝染病に「ほうそう(疱瘡=天然痘)」がありました。今ではほとんど耳にしない言葉ですが、罹患すると高熱が出て皮膚に発疹ができ失明の危険性もあり死亡率の高い病気です。完治しても発疹の痕のかさぶたが醜く残るため、容貌に大きく影響し精神的にも傷を残しました。「独眼竜」の異名で知られる伊達政宗も、幼少時に発症し右目を失明したと言われています。

江戸時代には、流行した疱瘡の魔除けとして、疱瘡に対する呪色の赤色で摺られた浮世絵があり、これらは総称して「疱瘡絵」または「赤絵」と呼ばれていました。 赤色は太古から魔除けの色として信じられ、疱瘡罹病時に身体に出る発疹が赤色だと軽症、黒色だと重症と言われていたそうです。この為、罹患しても病状が軽くあってほしいとの願いから浮世絵には赤色が好んで用いられましたが多色摺りの物もあり、また、疱瘡絵には一枚物の浮世絵の他に見舞い用の菓子袋に摺られた物や絵本、肉筆画などがあります。

戯画作品で有名な「歌川国芳」がこの手の作品をたくさん描いていて、画題としては、目が丸く大きな「みみずく」、倒れてもすぐに起き上がる「達磨」、病状が軽く済むように「張り子の犬」「でんでん太鼓」「風車」、その強さにあやかろうと「鎮西八郎為朝」「和藤内」「金太郎」「桃太郎」などがあてられています。 見た目も可愛くユーモアに溢れた疱瘡絵は、治療法がなかった江戸時代、病状が軽く他人に伝染しないようにと願い部屋の壁などに貼って使用されたそうです。

疱瘡はWHOによって昭和55年に世界的に根絶したと発表があり、現在、地球上では発生しないとされる病原菌です。がここ近年は、恐ろしいことに生物テロに悪用される危険性が指摘されています。

1236149129_img802

歌川国芳 江戸東京博物館蔵

1236149129_img821-3

歌川国芳 「金太郎」 東京都立中央図書館蔵

1236149129_img805

歌川国芳 国立歴史民俗博物館蔵

1236149129_img821-1

歌川国芳「鎮西八郎為朝・疱瘡神」東京都立中央図書館蔵