古写真(郵便はがき)-3
古写真を整理していたら、先日紹介したものに関連した写真が何枚か出てきました。
この写真には、「(長崎縣) 千々石濱辨天鼻の景 (3) BENTEN-BANA ON THE SHORE OF CHIJIWA NEAR NAGASAKI.」と説明書きしてあります。
が、どうも現在の雲仙市小浜町木津(港)にあたるようで、写真には砂浜に大きな岩が点在していて、手前には山高帽を冠り、マントのような物を身につけた人物が写り、砂浜の先は山肌が海面に迫る急峻な崖で、またその梺近くの海では一艘の小舟に立って櫓をこいでいるような姿が見られる、大正期の景色のようです。
木津と言えば、中学三年生の夏休みのある日の午後、千々石(浜)で煮干し製造をしている祖父母と一緒に暮らしていた同級生の家に遊びに行き作業を手伝ったことがあります。そして夕方作業を終えた後、彼の祖父母には内緒で、彼の漕ぐ伝馬舟に乗って木津に住んでいる同級生の家へ海から遊びに行きました。
私も途中で舟の漕ぎ方を教えてもらい、一生懸命漕いでみますが、付け焼刃では同じ所をぐるぐる回るだけでなかなか前へは進めません。夕陽が沈みかけた頃になって無事木津港に入って同級生宅に寄り、舟で来たよ、と話すとびっくりしていました。家の人たちからもよく来たと歓迎を受け、夕飯までご馳走になり、また、復路のほとんども彼が舟を漕いで千々石に帰り着いたのは夜の9時近くでした。
夕暮れ時になって、私たちが行先も言わずに突然いなくなり、また舟も見当たらないと心配し、あちこち探し回っていた彼のお祖父ちゃんからは二人大きなお目玉を食らいましたが、夏の日の懐かしく楽しかった思い出の一つです。
今は、私たちの突然の訪問を歓迎してくれた木津の友も、卒業、成人後も家族ともども親交を深めていた千々石の親友も、先に黄泉の国へ旅立ってしまいましたが、古写真を見ながら無性に二人のことを想っています。