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歌麿の「白うちかけ」

2009-05-23

歌麿の作品の中で、父が大絶賛しているのが「錦織歌麿新模様 白うちかけ」(寛政8~10年=1796~98年)という錦織歌麿新模様シリーズの一作品です。

これは墨線の使用を最小にした色彩表現の作品で、豪華な打掛は空摺りと色面のみで描き布の柔らかい質感と立体感を表現しています。

また、左上の巻紙状のこま絵は、“理想的な美人画を描くことの出来る歌麿の画料が高いのは当然で、画料の安い下手な絵師を使う版元は愚かだ”といった文章が書かれ、絵師として絶頂期にあった歌麿の自負心が表れています。

現存する本作品は経年によって退色が著しく、江戸当時の鮮やかな色彩を感じることは残念ながら出来ません。当時にタイムスリップして摺り上がりの状態を観ることが出来たらどんなにいいかと思います。

しかし、浮世絵研究者たちが復刻した作品群は、オリジナルにより近い状態を今の世の人々に伝えてくれます。復刻作品は所詮複製品だと思われがちですが、経年による退色で鑑賞に耐えられないような作品を様々な角度で研究し忠実に再現したものは貴重なものです。

豪華で色彩鮮やかなこの作品は、版を重ね合わせる木版画ならではの趣向が最大限に現れたとても美しい作品です。

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ベルリン東洋美術館蔵

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「六大浮世絵師」 野口米次郎著 木版口絵(復刻版)より