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山種美術館「上村松園/美人画の粋」

2009-06-05

上野を後にし、千鳥ヶ淵近くの山種美術館です。

女流画家の草分け的存在で、多くの女性ファンを持つ上村松園。没後60年に当たる今年、美術館が誇る所蔵作品から「上村松園/美人画の粋」が開催中でした。この美術館は7月で休館しその後移転するため、現場所での最後の企画展となります。

女性で初めて文化勲章を受章した松園の美人画は浮世絵に原点があると言われています。松園の作品と共に浮世絵師の中でも美人画を得意とした春信・清長・歌麿の浮世絵美人画、それに松園と並び称される鏑木清方や清方と師弟関係の伊東深水等の美人画59点が展示されていました。

松園の「蛍」は、歌麿の「蚊帳の中」を髣髴させる作品で蚊帳の布質と透け感がうまく表現され、女性の上品で聡明な美しさを感じました。 昭和17年の作品「娘」は、平穏な生活の中にある何気ない幸せが続いてほしいと願う松園の気持ちが現れているようです。柔らかな質感の黒々とした髪の毛の表現や着物、帯など色彩の組み合わせが見事でした。それから亡くなる前に発表した「庭の雪」は、楚々とした美しさと優美な色香を感じるまろやかさに包まれていて、高い品位と格調ある美人画に仕上がっています。

松園は特定の人物をデッサンすることなく、女性の視点から自身の中に生まれる女性像を生涯追い求め描いています。一貫して、女性の内奥にある母性愛などを豊かに感じることができます。

親しい友のなかった松園にとっての心の友は小野小町、清少納言、紫式部、楊貴妃や西太后で、友人に逢いたくなると画室に入って心の友と対座すると語っています。当時の男性主体の日本画壇社会の中で、女性一人で強く逞しく芯が通り凛とした松園の生き様までもが画面に蘇って見えるようでした。

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「蛍」

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「娘」

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「庭の雪」