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浮世絵の中の風景画

2009-06-23

浮世絵で思い浮かべる作品に、CMでもお馴染みの北斎の赤富士(正式には「凱風快晴」)や大波(同じく「神奈川沖波裏」)などがあると思いますが、このような風景画は江戸時代後期に漸く浮世絵の新しいジャンルに加えられました。

江戸時代後期は、経済の成長や交通網の整備に伴い庶民の間に日帰りの行楽や遠隔地への旅行の関心が高まってきました。その中で各地の名所図絵、道中絵や旅行文芸などが盛んに刊行され、特に十返舎一九の「東海道中膝栗毛」が爆発的人気を呼びました。

浮世絵には早くから風景描写はありましたが、それはそれまでの伝統的な主題であった美人画・役者絵などの背景としての風景描写としてでした。その風景描写が主役となるためには、透視遠近法や陰影法の習熟、ぼかし技法による空間の自然な表現方法の習得など超えなければならないハードルがありました。

葛飾北斎はこうした課題を克服して「富嶽三十六景」を完成させます。これに触発されて、歌川広重が「東海道五十三次」(保永堂版)を始めとする数多くの街道画や名所絵を制作しました。また、歌川国芳も独特の完成度の高い風景画を描き浮世絵の主要ジャンルとして定着することになります。

浮世絵の風景画について、少し書いてみようと思います。

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葛飾北斎「凱風快晴」

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「神奈川沖波裏」