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北斎の風景画(1)

2009-06-25

葛飾北斎(1760~1849年)は、72歳の年(1831年)に「富嶽三十六景」を発表しますが、これが浮世絵の新しいジャンル「風景画」の確立と言われています。また歌川広重も同年、一幽斎の名前(号)で「東都名所」を発表し、その2年後には「東海道五十三次」を世に出して、北斎と並び浮世絵風景画の二大巨匠と言われています。

北斎についてみると、19歳で浮世絵の世界に入り勝川派の絵師として役者絵や黄表紙の挿絵などを手がけます。その後、狂歌絵本や肉筆美人画などで優れた作品を制作する中、銅版画の影響を受けた作品を発表します。 「くだんうしがふち」(1804年)や「おしをくりはとうつうせんのづ」(1806~1808年)などは、透視遠近法や陰影表現など風景の洋風表現にチャレンジしています。現実にはあり得ない極端にデフォルメされた坂の土坡や大波など軽やかさはないものの、既に北斎ならではの卓越した表現力が表れています。 また、縁取りをした平仮名落款の洋風風景版画は5作品発表されていますが、平仮名を90度横向きにして「ほくさいえがく くだんうしがふち」と署名し、ローマ字のように見える工夫をしています。

銅版画の要素を取り入れ木版画の技法で表現したこれらの作品は、後の「富嶽三十六景」を制作する礎となり、浮世絵の世界に風景画を大成することになりました。

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「くだんうしがふち」1804(文化元)年

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「おしをくりはとうつうせんのづ」1806~1808(文化3~5)年