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創作版画の始まり

2009-09-05

明治末から大正にかけて、西洋の印象派以降の新しい絵画様式が伝わり雑誌などで度々紹介されるようになります。その中で、ムンクやビアズレーなどの自画・自刻の版画作品は独特の味わいを持っており、素描や油彩では表現できない版画独自の方法を用いた作品に日本の若い洋画家たちは強い衝撃を受けました。

そして個人尊重の社会思潮も重なり、自由で個人主義的な芸術作品を自画・自刻・自摺の版画で制作しようと若い洋画家の山本鼎・石井柏亭・森田恒友などを中心とした方寸グループによって創作版画運動が開始されました。

日本の「創作版画」は、1904(明治37)年『明星』7月号に山本鼎が墨色と黄土色の2版を使った「漁夫」を発表したのが最初と言われています。そして1907(明治40)年、山本鼎が雑誌『みずゑ』に創作版画の技法を連載したのをきっかけに創作版画制作が国内で始まり、版画における芸術表現を競い合うようになりました。

過去の日本の伝統芸術浮世絵には見られなかった独特の味わいを持った創作版画は、版画の面白さを再発見させることになります。

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山本鼎「漁夫」 1904(明治37)年