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歌川国政の役者絵

2009-09-17

東洲斎写楽が一世を風靡し消え去った寛政7年の末、歌川国政が歌舞伎役者の大首絵を発表します。役者の生身の姿を強調した写楽に対し、国政は役者の魅力と性根を誇張して描き、瞬く間に人気絵師となりました。

「初代岩井粂三郎の島原の禿わかば」は、色っぽい目とすけ口の唇に手彩色が施され、凄みのある美貌を持つ粂三郎をよりあどけなく描いています。また昨年、国内で開催された「ボストン美術館浮世絵名品展」に出展された「市川鰕蔵の暫」は、手前に袖の三升、中央に睨みの利いた蝦蔵を配した大胆な構図で、鮮やかさが引き立っています。

寛政8年には、春英・豊国と並んで役者絵の腕を競います。しかし将来を期待されながらもその後10年ほどで廃業し、38歳の若さで没したと言われています。

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国政「初代岩井粂三郎の島原の禿わかば」

山口県立萩美術館・浦上記念館蔵

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国政「市川鰕蔵の暫」 ボストン美術館蔵