山本美術館 > ブログ > エディションナンバーとA.P.について

エディションナンバーとA.P.について

2010-03-31

来館者の方々から、版画作品の左下の余白に記入されている番号(分数)についての質問が多くあります。

これは、エディションナンバー(限定番号)と言われるもので、分母は制作された作品の総数で、分子はその作品の通し番号を示したいてい鉛筆で記入されています。しかし、記入された分子の数字は実際に摺られた枚数と一致しないこともあります。

江戸浮世絵や大正・昭和初期の新版画にはエディションナンバーを書く習慣はなく、エディションナンバーが記入されるようになるのは19世紀末頃からです。コレクターに摺り部数に対する保証を与える必要性をと、フランスの画商のアンブロ・ヴォラールが定着させたと言われています。また、版画に記された番号に関わらず版画そのものは全作品同様に扱われ市場の評価も同等です。

この他に、限定番号の代わりに「A.P.」(アーティストプルーフ/ E.A.も同義)や「H.C.」(非売品)と書かれた作品があります。これは、一般的に作家用の保存作品などのことで、摺られる枚数は限定制作部数の5~10%程度です。ほとんどの場合、通常の作品と同等に扱われますが試し摺りとしての性格が強い作品もあります。

一般的に近・現代の版画作品はエディションナンバーの記入が定着していますので、手書き作品との見分けも一目瞭然です。

1270012513_NONALNUM-413235283129小﨑侃「千々石の海」 壱/200 (2006年制作)