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平城京遷都1300年観光旅行(5)  中宮寺

2010-05-15

次に、法隆寺・東院伽藍の隣にある中宮寺を。ここは、聖徳太子の母の穴穂部間人皇后によって創建された寺院と伝えられていて、創建当初はその東400メートルにあったそうです。

今の本堂は火災の被害防止を考慮して昭和43年に建てられた和風の現代的建築ですが、ここには注目すべき二つの国宝があります。

一つは、本尊の菩薩半跏像(7世紀)で、本堂へと続く階段を登ると真正面に東洋美術における「考える像」で有名なこの像が安置されています。像の高さは132cm、坐高87cmとそれほど大きくはないものの、神秘的な光を発しているような存在感があります。じっくり観察してみると、思いにふけったうつむき加減な表情の頬に軽く添えた右手の人指し指が、像全体をより美しくみせています。背中は伸びすぎず屈みすぎずで何とも良いバランスです。飛鳥時代の最高傑作と言われる彫刻は、清純の気品漂う優しさに溢れていて、これまで見たどの像よりも美しい表情をしていました。

もう一つが日本最古の刺繍作品「天寿国曼荼羅繍帳(てんじゅこくまんだらしゅうちょう)」(7世紀 展示品は複製品)で、聖徳太子が亡くなった後、妃の橘大郎女が宮中の女官らに刺繍させたものです。兎や鳳凰、天女や神将、フリルスカートの衣装を身に着けた人物などが豊富な色彩で描かれ、飛鳥時代の風俗を知るとともに飛鳥文化のカラフルさに驚きました。

飛鳥文化の醍醐味を存分に味わい知ることができ、菩薩半跏像の微笑みは生涯忘れることはないと思うほど印象深いものでした。

1273898806_CIMG9529-1中宮寺 本堂

1273898806_img316-1菩薩半跏像

1273898806_img317-1天寿国曼荼羅繍帳