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平城京遷都1300年観光旅行(10)-2 阿修羅像

2010-05-23

「阿修羅に会いに行く・・・」。

今回の旅行の大きな目的の一つでした。

興福寺を象徴する阿修羅像は、国内では最も有名な仏像と言って良いのかも知れません。昨年、東京・福岡の両国立博物館で行われた「国宝 阿修羅展」には165万人を動員したと言います。

西金堂に安置されていた阿修羅像は、現在、興福寺国宝館に収められています。運よく来館者の少ない時間帯に入館できて、心行くまでゆっくりと見ることができました。

阿修羅はインド神話の中に出てくる最高神のインドラ(帝釈天)と戦っては敗れる悪神で、赤い肌の三面六臂の神で激烈な気性の持ち主です。しかし、興福寺の阿修羅は少年とも少女ともいえない清々しい表情をした乾漆像です。三つの顔に六本の腕を持つ尋常ではない姿ですが、全く異様さが感じられません。顔は小さくプロポーションもよく、六つの腕は空間に自由に伸びて美しい造形です。そして、なんといっても顔の表情にその魅力があります。三つの顔それぞれの微妙な表情は限りなく繊細で、清純さや儚さを感じます。目には涙が浮かんで潤んでいるように見え、張りつめた複雑な心情を見ることができます。これは、自らの罪を懺悔し釈迦への帰依を誓った瞬間を表現したためではないかと言われています。

阿修羅の表情や眼差しが目に焼きついて、今なお離れることがありません。

1274575156_img328阿修羅立像(国宝 734年制作)

1274575156_img329阿修羅立像の顔の一つの表情