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長崎ハタについて(2)

2010-05-30

長崎市内ご出身の大久保さんは、物心付いた頃にはハタを揚げて遊んでいたそうです。最初にハタを作ったのは小学5年の頃で、「ヤマト」と切り貼りしたハタだったと懐かしく話され、その後、ハタ揚げは不定期になったが、11年前位から自分好みのハタを作って揚げたいと本格的に制作を始めたとのことです。

ハタを作るには骨になる竹が必要ですが、大久保さんは冬季の空気が乾燥している時期に、4~5年ものの竹を採取に近くの私有地に行きます。「カーン」と高い音が鳴るのが丈夫でしなりも良い竹とのこと。採ってきた竹は好みの長さに切り、細く割いていきます。そして骨組みを作って和紙を貼り付けます。

長崎ハタの特徴は菱形で和紙を切り貼りして模様を描くことにあり、オランダの国旗と同じ白・赤・青の三色が基本色です。シンプルにパターン化した130種類の基本デザインがあり、色や配置などの組み合わせを変えて自分流のハタを作り上げていきます。下準備さえ済ませておけば、貼り合わせるにはほんの15分くらいでできるそうです。

ハタの大きさは十文(一文=2.4cm)の小さなものから百文もの大きさまであり、大会時に使用するのは二十文で、大久保さんたち名人は200mもの空中高くまで揚げて切り合いをするそうです。そこで、大事になるのがハタにつける紐「ヨマ」で、「ビードロ」と呼ばれるガラスの粉を練り込んだ丈夫な紐が欠かせないそうです。風を読みながらハタを上下左右、自由自在に操り、相手のハタを切り落とします。

大久保さんは「長崎ハタ揚げ大会」で何度も優勝されており、その腕前は一流で見事なものです。揚げることも作ることも大好きだと嬉しそうに話されますが、現在は作り手やハタ揚げ名人たちも高齢化が進み、大久保さんたち若手がその後に繋げていく大事な役目も担っていると教えてくださいました。

オランダとの貿易で栄えた長崎ならではの文化の一つである長崎ハタ。お話から、大久保さんや長崎人のハタ揚げへの愛着の深さと共に今後も後世に受け継がれていくために尽力して行きたいという強い気持ちを窺い知ることができました。

1275179364_CIMG0450-1竹を割き、骨組みを作る

1275104679_CIMG0474-1骨組みを作っているところ

1275179364_CIMG0447-1完成したハタの数々