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浮世絵の団扇絵

2010-07-25

浮世絵のジャンルに「団扇絵」と呼ばれるものがあります。これは、団扇に貼る目的で描かれた浮世絵のことで、役者絵や美人画などをモチーフに団扇型の画面で摺り出しています。

江戸時代の夏のファッションに欠かせないアイテムだった団扇は夏の風物であり、浮世絵師の手がけた団扇はとても人気がありました。お気に入りの役者や美人の描かれた団扇を手に、夏の遊び場へ出かけるのが粋な装いだったそうです。

団扇絵が描かれ始めたのは浮世絵創始期の早い時期と言われていますが、団扇は実用で使われて消耗するため団扇の状態で現存しているものは大変少なく貴重なもので、団扇に加工する前の版画状態のものは多少残されています。

円形から楕円形に変化した団扇絵の最盛期は幕末です。歌川派の初代豊国やその弟の国貞、国芳が制作の中心で、質・量ともに優れた団扇絵を残しています。その他同時期には北斎や広重も団扇絵を手がけ、花鳥画や風景画をテーマに主題の枠を広げています。

当館では常設展示の一つに広重の「うちわ絵」を展示しています。高帽子を被った女性が風流に舟遊びをする様子をブルーの涼しげな色彩で描いた貴重な作品です。どうぞご覧ください。

1280034541_img442-1-1三代豊国「弥生雛次郎」

(左が表、右が裏、1860年 千葉市美術館)

1280034541_img443喜多川歌麿「江戸三美人」

(寛政中期1789~1801年、東京国立博物館)