北斎の夏美人画
2010-07-29
風景画の巨匠として名高い葛飾北斎(1760~1849年)は、美人画の分野でも高い評価を受けています。その中で、江戸の夏の女性の日常生活の一端を生き生きと描いた作品があります。
「夏の朝 鏡見美人図」はS字型に身体をくねらせ、鏡に向かって化粧をする立ち美人の夏の朝の様子を肉筆で描いています。鏡に映る顔の柔和な表情が美しい作品です。
「美人夏姿図」は、夏の装いである絽の薄い着物を着た女性が首を深く折って白いしごき帯を結んでいる立ち姿を描いた作品です。萩の枝葉の模様の涼しげな淡い青色の着物に、襦袢の赤色がうっすら透けて見えていて艶かしく、恋にふける女性の表情を盛り上げています。
極端に首を曲げたポーズは北斎美人画の大きな特徴で、女性の心情表現がうまく描かれています。そして色彩の美しさや着物の意匠性の高さなど北斎の描き出す美人画からは常に品位が感じられ、ますますうっとりとなります。
葛飾北斎「夏の朝 鏡見美人図」(1806~13年頃 個人蔵)
葛飾北斎「美人夏姿図」(1803~13年頃 個人蔵)