山本美術館 > ブログ > 寛政の美人たち

寛政の美人たち

2010-09-05

開催中の「浮世絵&新版画の美人画展」では、江戸、大正、昭和時代の美人たちを描いた作品を紹介しています。

その中で、喜多川歌麿の作品「當時三美人」は、寛政の当時、江戸市井で評判の美しい3人の女性を描いたものです。中央に富本節(常盤津節の分派)の名取「富本豊雛」、左が両国薬研堀の煎餅屋高島屋の娘「高島おひさ」、右が浅草随身門わきの水茶屋の娘「難波屋おきた」で、夫々の着物や団扇につけられた紋が人物を特定しています。

安定した三角形の構図は、中国の伝統的な画題「三酸図」を見立てているとも言われています。この「三酸図」とは、孔子・釈迦・老子の3人が酢をなめて酸っぱそうな顔をした絵ですが、教えの違う三者でも酢を酸っぱく感じるのは同じ。歌麿の描いた寛政の3人の美人も三者三様の美貌ではあるが、誰がみても美人であると言うことです。

浮世絵の美人画は、単に美しいだけではなく、奥深いものがあって面白くもあります。

1283665707_CIMG0099喜多川歌麿「當時三美人」 1793(寛政5)年頃 千葉市美術館蔵