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浮世絵の中の「金太郎」

2010-10-15

江戸のヒーローとして牛若丸に並んで人気が高いのが「金太郎」です。「金太郎」の物語は、中世の「大江山酒呑童子」伝説や能の「山姥」などの影響を受けて作られたもので、近松門左衛門の「嫗山姥(こもちやまんば)」を通じて世間に広まったと言われています。

足柄山の山姥が夢で赤竜と交わい生まれたと言われる金太郎は、全身が赤く怪力を持って誕生します。鉞(まさかり)をかつぎ熊や猿や鯉などと山野で遊びながら育ち、やがて持って生まれた怪力を源頼光に認められ、成人すると京に上って四天王の一人「坂田金時」となり酒呑童子退治で活躍します。

気はやさしくて力持ち、後に武士として出世する金太郎。江戸時代には赤い姿は悪霊病魔を追い払う呪力があると信じられ、立身出世の願いが込められて親しまれました。

金太郎を描いた浮世絵では、鳥居清長は鉞を担いで熊に乗る勇敢な金太郎を描き、葛飾北斎や歌川国芳は幼少期の金太郎が鯉や牛と遊んでいる様子や妖怪を退治する姿など、怪力を強調したヒーローとして金太郎を描いています。また、喜多川歌麿は山姥を若い母に変身させて描き、小さい金太郎が母に甘える母子像として母性愛溢れる作品を50図近く制作して大評判になりました。

子どもたちにはヒーローとして歓迎され、大人たちには理想のこども像として人気があった金太郎は、江戸の庶民たちにしっかりと定着し最も身近に感じるキャラクターだったようです。

1287115388_img009鳥居清長「横笛を吹く金太郎」 寛政頃(1789~1800年)

くもん子ども研究所蔵

1287115388_img010喜多川歌麿「山姥と金太郎」寛政末(1798~1800年)

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1287115388_img011歌川国芳「坂田怪童丸」 天保頃(1830~1843年)

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