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ガラス絵

2010-10-31

ガラス絵は透明のガラス板の裏面に絵の具で描いたものを表面から鑑賞する絵画で、14世紀のイタリア・ヴェネツィアに誕生し、その後、北欧からインド、中国、日本へと伝播しました。

日本では「びいどろ絵」と呼ばれたガラス絵の制作は18世紀後期に長崎で始まり、それから江戸や上方などに広まっていきました。長崎では石崎融思とその子の融斎、荒木如元などが中国製のガラス絵の影響を受けた洋風表現で描いています。江戸では司馬江漢が独自の表現でガラス絵を描き、葛飾北斎は「絵本彩色通」初編にびいどろ絵の制作方法を述べていますが、北斎がこの方法でガラス絵を描いたかどうかは不明とのことです。他には、歌川国芳画系の浮世絵風美人画が多く制作されています。

ガラス絵は通常の絵の順序と逆に色彩を重ねていきます。しかも、左右逆で書き直しがきかないものです。例えば、人物の顔を描くときは最後に描く鼻を最初に描き、それから周りの肌の色を塗っていきます。加筆や塗り直しができないために制作は難しいですが、絵の具が直接空気に触れないので汚損することなく、また絵の具が平滑で濡れたような発色で保たれています。 現在は、下絵を描いたトレーシングペーパーにガラス板を載せて絵の具を塗り重ねる方法が一般的です。

当館では、小﨑侃制作の大ガラス絵3点を常設展示しています。長崎古版画などをモチーフにしたこれらの作品は、滑らかにつるりとした質感を持ち彩色豊かなもので、見応えがあります。

1288492450_img033-3小﨑侃 「楽隊」 (ガラス絵 80号)