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「お母さんが読んで聞かせるお話 A」

2011-02-12

「お母さんが読んで聞かせるお話A」は、物語を富本一枝さん、影絵(挿絵)を藤城清治さんのお二人が書かれた絵本で、昭和31年から「暮らしの手帖」という雑誌に長期連載された物語を一冊の本にまとめたものです。

この絵本を昨年、鹿児島にお住まいの父の恩師H先生から、私の妹が出産準備に入った頃に「お嬢さんにどうぞ」といただき、私も読んでみました。

富本一枝さん(1893-1966年)は美術大学を卒業後、女流文学者たちで結社された「青鞜社」に籍を置き、尾竹紅吉の名前で新しい時代の女性のあるべき姿を精力的に推進し、「婦人公論」などに随筆・評論等を書いています。また日本画家の尾竹越堂の長女であり、人間国宝の陶芸家・富本憲吉の奥様で、芸術家一家の中で生涯を過ごされています。

富本さんのお話は、みんなが知っている日本の民話から世界のお話、動物や神様などを主人公にしたオリジナルの物語まで優しい温もりが伝わってきます。また、これらの物語に合わせて藤城清治が描く白黒の影絵は、多国籍の色彩に見える何とも不思議で、如何様にも見えるといった魅力があります。この絵本は本文の文字が小さく三段組になっているので、絵を見せながらお母さんが物語りを読んで聞かせることを前提に構成されています。

また、いただいた昭和51年製のこの絵本は、H先生の妹さんが作者・富本さんのご長男、壮吉さん(元松竹の映画監督)の奥様という関係で、H先生が所蔵されていたものです。

私も小さい頃にはお気に入りの絵本を何度も父母に読んでもらい、その度に楽しくわくわくしたものです。今の子どもたちは映像の世界が中心となっており、絵本に親しむ機会が少なくなっているように思えます。一方、こどもたちの笑顔を楽しみに、地道に「読み聞かせの会」などのサークル活動をしている方々もおられます。現在の子どもたちにも「本」の楽しさを強く知って欲しいし、まずはお母さんが子どもに本を読んであげることが大切だと思います。

1297476954_img519「お母さんが読んで聞かせるお話A」(暮らしの手帖社発行)

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