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月岡芳年

2011-03-24

小林清親と共に最後の浮世絵師と称されているのが、幕末から明治前期を生きた浮世絵師「月岡芳年」(1839~1892年)です。

歌川国芳に師事した芳年は、豪快な武者絵にはじまり、歴史絵・美人画・風俗画・古典画を手掛け、後に大蘇芳年と号し明治の浮世絵を形成しました。

当初は、幕末の動乱期に斬首された生首や戊辰戦争の戦場跡を写生した生々しく残忍な作品や、有名な「奥州安達がはらひとつ家の図」(1885年)のような無惨絵で知られ「狂画家」などと呼ばれました。

しかし、晩年の大作「月百姿」は月に因んだ説話・故事・伝承で構成され、様々な表情をした月が背景に浮かびあがった情緒豊かな100点のシリーズものです。浮世絵にも未練を残しつつ研ぎ澄まされた新しい表現方法は、激動する時代の流れを感じさせます。

また、平安中期の武人を描いた3枚続の「藤原保昌月下弄笛図」は、主人公の瞬間の動きはストップモーションのように見せて、周囲の人物や自然は普通に時間が動いているような印象を受ける圧倒感ある代表作品です。

浮世絵が衰退する明治初期の浮世絵師の中で最も活躍した芳年の作品からは、描かれた人物の心情が直に伝わってきて、見る側の感受性を豊かにする作品で、私も見るたびに強く感じ惹かれます。

1300943458_img533芳年 「藤原保昌月下弄笛図」 (1882年)