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石臼の初氷

2011-12-27

今朝は、自宅庭先にある石臼にかなりの厚さの初氷が張りました。

この石臼は、私にとって早くに亡くなった父の思い出がいっぱいこもっています。臼は、石工だった父が私の小学3、4年生の頃、千々石の自宅から徒歩5分くらいの川で自作した手製のものです。川は普段は大雨が降らないと水が流れない枯れ川でした。その川の中から、父は臼が作れるような大きさと質の石を見つけて製作に取り掛かり、何日かかかって仕上げました。

最初に、石割道具の「げんのう」や「石頭(せっとう)」などを使って手頃な大きさに石を割り、次に全体を丸く形取った後、色々な種類の「のみ」を使ってコツコツと根気よく中を刳り貫いたり、外側を削ったりしながら臼の形に整えていきます。父が一心不乱で作業する姿を、私は父の傍で一人遊びながらよく見ていました。昼時になると、母がご飯と呼びにきますが、父は作業を続けてなかなか止めようとしません。母はしびれを切らして私だけを連れて帰ります。私は「父ちゃんも家は近いのに戻ってきて食べればよいのに」と思いながら食べていました。母が父用に弁当のおにぎりを作って食べ終わった私に持たせます。父に届けると、やっと手を休めて、近くの石に座っておいしそうに食べ始めます。そんな日々が何日か続いて臼は完成し、近所の人に手伝ってもらいながら自宅へ運びました。いつも正月前の今の時期になると、その臼を使って杵で餅つきしていたのを思い出します。

父が亡くなり、また臼で餅をつかなくなってからは、臼は庭先において時には川魚をすくって金魚鉢代りなどにしていました。平常、そんな風に無造作に庭先でごろごろさせていたので、近所の人や庭師さんなどから何度か分けて欲しいと相談がありましたが、私には父が作った大切な形見の臼ですので、譲ることはしませんでした。

そして、この愛野の地に引っ越したとき、植木屋さんに千々石からトラックで運んでもらい庭つくりに活用できて安心しています。

1324983514_NONALNUM-A5B3A5D4A1BCA1C143494D4734313635氷が張った石臼

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