六十余州名所図会「阿波 鳴門の風波」
2012-07-25
広重の「六十余州名所図会」に、今の時期にあった作品「阿波 鳴門の風波」があります。
六十余州名所図会は全国津々浦々の風景を描いたシリーズもので、全部で69作品です。このたび、某版画研究所より「阿波 鳴門の風波」の復刻版が出ましたので、私も一つ手に入れました。
徳島県鳴門市の大毛島と淡路島を隔てる鳴門海峡は、潮の流れの速さで知られています。広重の作品は、荒々しい渦潮を船の上から覗き込んでいるような視点で捉え、渦巻く波を画面の手前に大きく描いています。そしてその渦の奥に、海中に突き出た大きな岩を左右に並べ、その間から海峡と遠くの淡路島を望んでいる構図です。また、岩に砕け散っている波の形は北斎の神奈川沖浪裏の波とよく似ています。
遠景の淡路島の穏やかな島影と近景の渦潮の荒々しい対比が、広重独特のヒロシゲブルーによって表され、臨場感ある作品です。
広重「阿波 鳴門の風波」