山本美術館 > ブログ > 「関根忠郎の映画惹句術」

「関根忠郎の映画惹句術」

2012-09-19

普段あまり見慣れずまた聞き慣れず、かねてから気になっていた「惹句」という言葉(文字)があり、おおよそ文字面からして、人を惹きつけるようなフレーズのことだなと理解していました。

先日、インターネットを覘いていると高倉健主演の映画「あなたへ」のポスターと一緒にこの文字を使用した本のタイトル「関根忠郎の映画惹句術」が目に留まりました。

著者の関根さんは現在75歳、1965(昭和31)年に東映に入社。その後、今日まで主に東映作品の惹句を担当、この度37年ぶりに高倉健映画の惹句を書いたと前書きで述べ、惹句(じゃっく)についても、簡単に言えば「人の気を引く文句」あるいは「人を惹きつける文句」という意味を持っていると説明しています。

映画「あなたへ」の惹句は、「ありがとう。人は、いつも伝えきれない想いを重ねて、一期一会の旅を続けている。」

私が小中学生時代に夢中になったチャンバラ映画、大菩薩峠の「甲源一刀流音無しの構え愈々冴ゆ! 闇に吼ゆる片岡千恵蔵の机龍之介!」、旗本退屈男の「この三日月疵に見覚えあり! 天下御免! 右太衛門の退屈男罷り推参!」、一心太助の「花のお江戸の名物は、火事と喧嘩と一心太助! スワッ、天下の一大事 八百八丁を突っ走る 錦ちゃん太助!」、新吾二十番勝負の「橋蔵のあとに新吾なし! 剣こそわが命! 恋も栄達も捨て、真剣勝負ひとすじに生きる美貌の青年剣士!」。それに「柳生一族の陰謀」の「我につくも、敵にまわるも、心して決めい!」等々。

そして、任侠映画の人生劇場の「やると思えばどこまでやるさー ドスにかけてもやりぬくぜ! 任侠の世界に賭けた男の意気地!」、昭和残侠伝の「地獄みやげに拝んでおけよ。 雨のしずくか血か汗か、濡れております唐獅子牡丹。」、緋牡丹博徒の「姓は矢野、名は竜子。通り名を 緋牡丹お竜と発します! 女だてらに鉄火の渡世! 男まさりの仁義と啖呵、修羅場を二つに割って斬る!」。実録路線映画、仁義なき戦いの「仁義にツバ吐くやくざの実態! 裏切り・復讐・憎悪・謀略- 昭和20年代の広島を舞台に、日本最大の暴力団抗争を鮮烈に再現する!」等々・・・。

主演スターが映った映画の看板ポスターを見つめながら、その上に書かれた映画のコピーを食い入るように読んで、どれほど期待に胸躍らせたことか。東映の女優シリーズや文芸作品等も含めて、ほとんど関根さんが創り出したものとか。うーむ。!!

1348036344_img003「関根忠郎の映画惹句術」(関根忠郎著 徳間書店)