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五葉作品「耶馬渓」

2012-10-13

明治37(1904)年、橋口五葉が夏目漱石の薦めで雑誌「ホトトギス」に挿絵を発表し、その翌年、初めて漱石から「吾輩ハ猫デアル」の装幀依頼を受けたのは五葉が25歳のときとのこと。

その後、主に装幀等の仕事を行い、明治44(1911)年31歳のときに京都方面から大分県耶馬渓や別府、宇佐八幡等へ旅行し、耶馬渓の奇勝風景などを2冊のスケッチブックにまとめ、この旅行成果が後の五葉作品に大きな影響を与えたと言われています。また、同年2月には三越呉服店の懸賞広告画に「西洋画図案此美人」を応募して第1等に当選、賞金壱千円を獲得しています。当時、千円という高額の賞金でも話題になったとのことです。

それから、日本画、洋画、デザインやイラストなどの様々な分野で作品を発表しながら、浮世絵研究・復刻活動等を経て大正7(1918)年3月、最初の版画「耶馬渓」を発表しています。耶馬渓には、構図は同じで摺りが薄暗い色合いのものと明るい色合いのものの2種類があり、いずれも雨景色を描いています。当美術館では、明るい色合いの作品を展示しています。

耶馬渓はこれから鮮やかな紅葉のシーズンを迎えます。この耶馬渓作品を鑑賞しながら、かつて旅した大分耶馬渓、青の洞門や石仏、羅漢寺などに思いを馳せています。

1350111823_NONALNUM-A5B3A5D4A1BCA1C143494D47313735302D31橋口五葉作品「耶馬渓」