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エミール・ガレと日本美術

2008-06-05

「エミール・ガレ」(1846年~1904年)は、アールヌーヴォー(フランス語で「新しい芸術」の意味)を代表するフランスのガラス工芸家で、フランスの北東部ロレーヌ地方ナンシーを拠点に、ガラス、陶器、家具という幅広い分野で活躍しました。

アールヌーヴォーは、ジャポニズム(ヨーロッパで見られた日本趣味・日本心酔のこと)の影響を強く受けていると言われています。というのも、アールヌーヴォーが花開いた19世紀後半には、ヨーロッパ各地で万国博覧会が開催され、日本の浮世絵版画、陶器や漆器などが出品され、ヨーロッパで日本美術に対する関心がより高まっていました。

その中で、日本美術に接したガレは、モチーフや形象、構図、色彩など日本美術の影響を受けた作品をたくさん制作していきます。

例えば、葛飾北斎の絵手本『北斎漫画』の中に描かれている鯉や蛙をモチーフにした作品や、水墨画の影響が見受けられる黒のコントラストを重ね合わせて表現した「悲しみの花瓶」シリーズ、また、ガレが家具に描いた文様には、広重の『名所江戸百景』の近景をクローズアップし極端に遠近感を強調した構図の影響と考えられるデザインもあります。

日本美術の影響を受けたガレの作品ですが、しかし、単なる日本趣味の受容に終らず他の要素と折衷させながら、幻想的かつ独創的な独自の表現方法を展開し、特異な世界を確立しています。

ガレの制作した魅力あふれる作品は、今後も世界の人々から愛される芸術品であり続けると思いますし、私も大ファンです。

花器 北澤美術館蔵

花器 ポーラ美術館蔵

花器 北澤美術館蔵