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広重は長崎に来た?

2013-05-27

当館で開催中の特別企画展「広重浮世絵版画展」も残り1ヶ月余りとなりました。

ご来館いただいた方に「広重は長崎に来たことがあったのですね」とよく言われます。今回の展示作品に、二代広重の「諸国六十八景」の中の「肥前 対馬海岸」や「肥前 長崎稲佐山」など長崎を描いた作品があるので、あの広重が江戸から遠く離れた長崎、そして離島の対馬まで写生の旅に来たのかと驚かれると同時に親しみを持たれる方も多いようです。しかし、残念ながら初代、二代、三代のどの広重も長崎を始め九州に旅したことはありませんでした。

「旅の絵師」とも言われる広重が、実際に見た景色を叙情豊かに描きあげたと思っている人たちの中には落胆される方もいるかと思いますが、迅速な交通手段がなく、また道中の安全面が物騒であった江戸時代は全国を旅するのは至難の業だったわけです。そこで、絵師たちが参考にしたのが江戸にある版本です。これらの白黒で描かれた参考資料を基に、広重は作品の中に風、雪、雨などの自然現象を取り込み情感豊かに表現しています。

「広重浮世絵版画展」は6月30日(日)までの開催です。皆様もこの機会に是非ご覧になってください。(N)

1369643587_CIMG4856二代広重「諸国六十八景 肥前長崎稲佐山」