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長崎県美術館「アントニオ・ロペス展」

2013-08-29

長崎県美術館で開催された「アントニオ・ロペス展」(~25日)を鑑賞しました。

アントニオ・ロペス(1936~)はスペイン出身で今年77歳、今なお現役で作品を制作している現代スペイン・リアリズム(写実主義)の巨匠と呼ばれる作家です。

数年前に訪れたマドリードの国立ソフィア王妃芸術センターで、彼の作品のいくつかを見ることができました。が、膨大の量の展示作品の中で見たロペス作品の印象は、ずいぶん几帳面なリアリズム主義者の作品だったなと記憶していたくらいでした。今回は、彼の作品を時間をかけてじっくり見ることができ、改めて感動しました。

マドリードの街を多く描いた風景画の特徴として、「ティオ・ピオの丘からのマドリード」は自分の立つ丘を画面手前に三分の二を占めるほどに描き、その先に続く本来描きたいマドリードの町並みと空は画面の三分の一しかないような構図の取り方が面白いところです。また、画面中央の建物などの対象物は緻密に描き、外側にかけては大まかに描いているものの、見る者の目の錯覚を上手く利用して全体の印象は写実的に描いているように見えるテクニックがあります。影や光を忠実に描くために毎日同じ時間に繰り返し出かけて描いたほどの凝り性で、およそ300号もある大作は17年もの歳月をかけて完成させています。

また、代表作「マルメロの木」は、ロペスを主人公にした映画「マルメロの陽光」で脚光を浴びた作品でもありますが、自宅の庭に生える太陽の光で黄金に輝く柑橘類のマルメロを、一日一日と熟していく実の変化をも捉え描きたいとの完璧さを追求し、実に白の点線を描き入れて測定したり修正したりして描いた跡が窺えました。

今回展示の人物画や彫刻などを含めた全64作品からは、ロペスの根気のある性格と作品に込める情熱などを窺い知ることができました。(N)

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