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富本憲吉展に寄せて

2013-11-13

この2、3日、天気予報通り急に冷え込んできています。昨夜は堪らず電気ストーブを準備しましたが、今日は陽射しがあって洗濯物はよく乾きそうです。

先日、当館で開催中の「富本憲吉自刻木版画展」をご覧になった年配のご夫人は、「孫娘がかつて、富本憲吉の次女の陶さんにピアノを習っていたのですよ。とても懐かしく思い、絵はがきを送ってやります。また素晴らしい木版画展でした。」と話してくださいました。

そう言えば、私も確か40年くらい前の25、6歳の頃、憲吉の長男の壮吉さんに、職場の職務上の書類を上司(恩師)のご自宅にお届けした際お会いしたことがあります。当時は、富本憲吉についての知識はもちろん無くて、また恩師と富本家との関係についても知りませんでした。ただ、恩師と歓談中だった壮吉さんは、上司が私のことを壮吉さんに紹介されると、わざわざ椅子から立ち上がり、私に向かって丁寧にご挨拶を返されました。その時は、なんとまぁー若造の私ごときにという思いと、お辞儀された後に長い前髪をかき上げられた仕草がとても印象的でした。それから何年かの後日になって、恩師から陶芸家・富本憲吉のことや、壮吉さんとは大学時代の学友で妹の主人、大映の映画監督で山口百恵主演のテレビ映画「赤いシリーズ」などを撮っていることなどを伺い、私の富本憲吉に対する関心が高まった次第です。

また、しばらく年月が経ち、辻井喬著「終りなき祝祭」(新潮社 1996年6月発行)を読んで、富本憲吉一家や恩師たちの学生時代や関係等についての理解をかなり深めることができました。

1384314050_IMG0007-1富本憲吉自刻木版画「壷に芍薬」(昭和初年頃)