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「ニューヨーク・ボストン旅行記」8

2008-08-23

8 イザベラ・スチュアート・ガードナー美術館

15世紀のヴェネチア宮殿風邸宅と中庭がとても美しいこの美術館は、ボストン大富豪の未亡人でイザベラ・S・ガードナーのコレクションを展示した美術館です。ヨーロッパ芸術に造詣が深いガードナー夫人は、ボッティチェリー、ミケランジェロ、ラファエロ等のイタリア・ルネッサンス期の絵画を中心に、彫刻・素描・版画の他、岡倉天心とも交流があった関係で日本美術も好んで蒐集しました。また、美術品蒐集の傍ら、画家や音楽家のパトロンとして積極的な後援活動をし華麗な一生を送りました。

この美術館の特徴は、自然光で鑑賞してほしいとの夫人の願いから中庭に面した大きな窓は開け放たれ、太陽の光が注ぎ込むとても開放的な展示室にあります。我が国でも近年、自然光で展示品を鑑賞出来るようにと設計された美術館が建設されているようです。電気が発明される前は自然光の中で制作をしたわけですから、作者と同じ条件で鑑賞するのが一番自然な形との意見に基づいてのことからです。しかし、作品の保存・保管・管理等の問題点もあるためまだまだ一般的には受け入れられていないようですが、他に類を見ない大らかな展示方法で自然の光や風を感じながら作品を鑑賞することが出来るのは、来館者にとって有難いことです。

それぞれの部屋はジャンルごとに分かれていて、単に絵画だけを鑑賞するのではなく工芸品・調度品・タペストリー・陶磁器・ガラス等が一緒に配置されているので、大豪邸拝見といった感じで鑑賞することが出来ます。自慢のダッチルームは、ルーベンス・レンブラントなどの傑作、ティッツィアーノルームは絵画とヴェネチア家具が調和し豪華絢爛な空間でした。

また、この豪奢な洋館では悲しい事件も起きています。1990年、警察官に変装した2人の泥棒によりフェルメールの『合奏』やレンブラントの小品など13点の絵画が盗まれ、今でも行方がわかっていません。名画盗難事件は今年になってもチューリッヒの美術館で総額200億円もの絵画が被害に遭う事件が発生しています。純粋に質の高い本物の芸術品に出会う喜びを多く得たいと願う人々のため、また後世の人々のためにも盗難や破損などの卑劣な行為が無くなることを願っています。

*写真撮影は禁止の為、カタログより抜粋し掲載しております。

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中庭

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ラファエロルーム

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ロングギャラリー

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ティッツィアーノルーム