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美人画について~(2)~

2008-09-05

(2)美人画の誕生と主要絵師

寛文年間(1661-73年)に掛幅の画面に遊女や芸者の立姿を描いた『寛文美人画』と呼ばれる立美人画が生まれました。これは浮世絵直前の形態であり、寛文末に登場した菱川師宣が寛文美人画の伝統を継ぐ絵画を制作し、これが浮世絵として引き継がれていきます。師宣の美人画をもって新しい浮世絵が誕生し、以降この師宣を祖として浮世絵が広がり、江戸の浮世絵は連綿と華やかな歴史を展開させてきました。

浮世絵美人画の名手としては、菱川師宣を皮切りに、鳥居清信・奥村政信・石川豊信などがいて、さらに中葉の錦絵時代以降は、鈴木春信・磯田湖龍斎・鳥居清長・喜多川歌麿・鳥文斎英之・歌川国貞・渓斎英泉などがいます。同じ美人画でも、版画や版本をほとんど手がけず肉質画を得意とした懐月堂安度・宮川長春・勝川春章・葛飾北斎なども注目すべき絵師です。

また、江戸時代には浮世絵以外にも美人画が数多く制作されましたが、なかでも円山応挙を筆頭とする四条円山派が活躍します。近代の日本画では浮世絵や四条派の流れを汲んだ鏑木清方・上村松園の美人画の名手が輩出し、近世期美人画の系譜を継承しました。

その後、浮世絵が衰退した大正時代は、浮世絵の流れを汲む「新版画」で、橋口五葉・伊東深水・名取春仙などが浮世絵を近代化した美人画を描きました。

いずれの絵師も、時代の流行を敏感に捉え、洗練された美意識で美人像の中におのおのの典型美を追求し、圧倒的な支持を集めました。百花繚乱で艶やかな美人画は、いつの時代にも社会に愛されています。

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石川豊信 『桜樹に短冊を結ぶ女』 財団法人平木浮世絵財団

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葛飾北斎 『二美人図』 MOA美術館蔵