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美人画について~(4)-2~

2008-09-11

2、浮世絵に見る遊女たち 悲しい物語編

遊廓の華として生きる花魁には色恋沙汰はつきもので、時には悲劇が起こりました。吉原花魁の筆頭であった高尾太夫の二代目・万治高尾が、仙台藩主の伊達綱宗に惨殺された事件「伊達騒動」(真相は不明で俗説)や、三浦屋の小紫が愛する相手(元鳥取藩主・平井権八)の墓前で喉を突いて後追い自殺をした事件などです。 これら伝説に彩られた花魁たちを題材にした絵本・読本(草双紙)が作られたり浮世絵に描いたりと、形として残り現代に伝わっています。

また、豪華絢爛な高位遊女と一変して、河岸見世・小見世・切見世などと言われる低級遊女を題材にした美人画もあります。低級遊女たちは、容色が衰えたり病気にかかったりで表通りの遊女として通用しない女性たちで、身体を時間売りしていました。 そのような遊女を喜多川歌麿や歌川国貞(三代豊国)などの人気絵師が描いています。中でも、歌麿の描いた『北国五色墨』という揃物は、江戸の北に位置していた吉原の様々な階級の遊女を五色の墨になぞらえて描き出した5枚のシリーズです。美人画の超一流絵師・歌麿の手にかかると、底辺遊女のふてぶてしい表情の中にどこか切なさが漂い、意気地や張り、粋や親しみが持てる雰囲気が滲み出ています。

身分に縛られた封建社会の中で、それぞれの人生を懸命に生きた江戸の人々の夢やロマン、悲しみや苦しみなどが、浮世絵を通して私達に伝わってきます。

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喜多川歌麿『北国五色墨 川岸』 ギメ東洋美術館蔵

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喜多川歌麿『北国五色墨 切の娘』 日本浮世絵博物館