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美人画について~(7)~

2008-09-19

7、風景の中の美人たち 人の賑わいや季節の移ろいなど、江戸が持つ楽しさ・美しさを今の私たちが知ることが出来るのは、当時を描いた浮世絵があるからです。江戸をテーマにした浮世絵が、風景の美しさを見せながら年中行事や人々の暮らしとも深く結びついて、様々な当時のレジャースポットを描き出しています。一般的に人気があった場面は、隅田川の川下り、花見の賑わいや花火大会などの祭りの様子です。

天明期(1781~1789年)、鳥居清長は江戸の名所風景の中に八頭身ののびやかな明るい美人画を数多く描きました。風景版画が確立する前に、美人と景色を組み合わせて両方の魅力を引き出し、一つのスタイルを築くことに成功しています。清長の美人画は、状況説明が行き届いた自然景観の中でひとりの容姿だけを美しく強調するのではなく、群像の一単位となっている美人たちの様々な姿態を披露してその魅力を堪能させてくれます。人物の日常の身振りやそぶりが親近感を生むと同時に観る人の遊び心を刺激し遊山へと誘ってくれます。また、清長の絵からは、江戸の人々が生活を真に謳歌した明るい時代の雰囲気が伝わってきます。

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鳥居清長『飛鳥山の花見』 東京国立博物館蔵

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鳥居清長『吾妻橋下の涼船』 ボストン美術館蔵

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鳥居清長『大川端桜上の月見』 太田記念美術館蔵

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鳥居清長『日本橋の往来』 ホノルル美術館蔵