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可愛いお化けたち

2014-07-26

夏季になるとお化けや幽霊が話題に上りますが、子どもの頃、夏休みにはついつい夜更かしして、両親から「あもよ」が出るから早く寝なさいなどと言われ怖がっていました。あもよとは得体の知れないお化けや幽霊を総称した長崎地方限定の呼び名のようですが、大人になった今では可愛いイメージさえあります。妹の4才になる男の子には、あもよよりイノシシの「ウリ坊」が抜群に効けるようで、言葉に出すだけで極端に怖がり即座に聞き分けが良くなります。

江戸時代にも、文化の成熟に従ってお化けを描いた作品が黄表紙などの戯作から、絵本、浮世絵へと広がっていき、子どもたちの玩具である浮世絵にもお化けのキャラクターが登場します。

葛飾北斎の百物語はあまりにも有名で、ろくろ首やお岩さんなどの幽霊の大御所たちが勢揃いしています。奇想天外な動植物を描いた伊藤若冲の「付喪神図」は、茶道具の付喪神(長い年月を経て古くなった器物などに霊が宿った妖怪のこと)が茶会を開く準備をしている様子が描かれていますが、とぼけた表情が妖怪とは思えないほどで、こんなお化けが出てくれたら思わず可愛がってしまいそうです。

子どもたちの遊び道具の浮世絵はおもちゃ絵と分類されますが、かるたや双六などにお化けの名前を一つ一つ記したお化け図鑑のようなスタイルが人気を博し、ユーモアたっぷりに描かれたお化けたちは一つのキャラクターとなりました。単に鑑賞するだけではなく、色を塗ったり、切り取ったり、組み立てたりして遊ぶ道具でもありました。

可愛いお化けキャラクターは江戸時代も今も人気のようです。(N)

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 伊藤若冲「付喪神図」(福岡市美術館蔵)  歌川芳信「志んばんおばけづくし」(個人蔵)