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広重「阿波鳴門之風景」

2014-08-15

広重の亡くなる前年の1857(安政4)年に発表された名作「阿波鳴門之風景」(復刻版)を展示紹介しています。

この作品を制作するに際し面白いエピソードが伝えられています。鳴門の渦潮がどうしても見たくなった広重は、家人にちょっと風呂に行ってくると声をかけて家を出て、帰ってきたのは数か月後の事。何事もなかったかのように帰宅した広重はちょっと遠い風呂に入って来たのだと、阿波の徳島まで気の向くまま、思いつくまま一人旅を楽しんだといいます。

「阿波鳴門之風景」は大判三枚続きの大画面に、鳴門の雄大な自然と穏やかな海面の随所に現れた渦潮を美しい色彩で描いていて、「武陽金澤八勝夜景」「木曽路の山川」を加えた『雪月花』の三部作シリーズの『花』と言われています。見ての通り花はどこにも描かれていませんが、鳴門の渦潮を「浪の花」として、荒海に咲く大輪の花に見立てて描いています。

この三部作は、広重芸術の最後を飾る大作です。是非ご覧になってください。(N)

IMG_3450z広重「阿波鳴門之風景」1857(安政4)年