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「ゴッホのひまわり 全点謎解きの旅」

2014-10-26

「フェルメール 全点踏破の旅」で人気のある朽木ゆり子さんの著書「ゴッホのひまわり 全点謎解きの旅」を読みました。11枚のゴッホのひまわりを訪ね、それぞれの作品に込められた物語を追っている一冊です。

損保ジャパン東郷青児美術館に常設展示されてある<ゴッホのひまわり>は、旧安田火災海上保険が58億円で落札したことでも有名で、日本のバブル時代を世界に知らしめる結果となり、その後の絵画作品の価格が沸騰したと言われています。この作品は、ガラス越しですがいつでも見ることができ、私も何度か見る機会を持てました。

この損保ジャパンの<ひまわり>は、ロンドン・ナショナルギャラリーが所蔵する<ひまわり>と構図が良く似ていて、この二枚を含めてゴッホは花瓶に入ったひまわりをアルル時代の6か月間に7枚描いています。 一枚目は花瓶に3輪、二枚目は花瓶に3輪とテーブルに3輪。その後に描かれた五枚のひまわりは、ひまわりの数が増え14輪ないしは15輪となって、背景も2枚はブルー・グリーン、残り3枚は黄色でクリーム色から濃い黄色まで微妙に違っています。

そしてアルル以前のパリ時代に、テーブルに置かれたひまわりの静物画4枚が描かれていて、花が枯れたもの、中心は茶色の種だけが残っている状態のもの、ひまわりの花の前と後ろの両方から描いているものがあります。枯れた花を中心に描いたり、花を後ろから描いたりする画家はゴッホくらいではないでしょうか。

描かれた11枚の内、一枚は兵庫県芦屋の個人の方が所蔵していましたが、残念なことに第二次世界大戦時の空襲で焼失してしまいました。そしてもう一枚は50年以上公開されてなく、はっきりとした行方がわかっていません。

私はこれまでの美術館めぐりの旅の中で、アムステルダムのファン・ゴッホ美術館でテーブルに置かれたひまわりの絵と花瓶に入ったひまわりの絵の2点、ニューヨークのメトロポリタン美術館でテーブルに置かれたひまわりの絵1点、ロンドンのナショナルギャラリーで花瓶に入ったひまわりの絵1点と損保ジャパンのひまわり1点の計5作品を見ていますが、パリ時代とアルル時代のひまわりの絵の大きな違いは、アルル時代の絵は色彩がとても鮮やかになり、ひまわりが生き生きと描かれるようになったところにあると思います。

独特の色彩を持ち、不思議なバランスを持った構図のひまわりの絵から、ゴッホが絵に込めたメッセージを知ることが出来るかも知れません。(N)

 

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朽木ゆり子著「ゴッホのひまわり 全点謎解きの旅」 (集英社新書)