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小崎侃木版画「鉄鉢、散りくる葉をうけた」

2014-11-01

種田山頭火の「行乞記(ぎょうこつき)」は、晩年の1930(昭和5年)9月9日九州から始まった行乞(托鉢の旅行)の日記で、同年11月14日には大分県の玖珠から耶馬溪に向かう道中「鉄鉢、散りくる葉をうけた」の句を詠んでいます。

行乞記には、“十一月十四日 霧、霜、曇、――山国の特徴を発揮してゐる、日田屋(三〇・中) 前の小川で顔を洗ふ、寒いので九時近くなつて冷たい草鞋を穿く、河一つ隔てゝ森町、しかしこの河一つが何といふ相違だらう、玖珠町では殆んどすべての家が御免で、森町では殆んどすべての家がいさぎよく報謝して下さる、二時過ぎまで行乞、街はづれの宿へ帰つてまた街へ出かけて、造り酒屋が三軒あるので一杯づゝ飲んでまはる、そしてすつかりいゝ気持になる、三十銭の幸福だ、しかしそれはバベルの塔の幸福よりも確実だ。”と記されています。

小崎侃先生が「鉄鉢、散りくる葉をうけた」の句に合わせて制作した木版画は、鉄鉢に入って来たのは食べ物ではなく枯れ葉だったという、晩秋の寒々しさと山頭火自身の心の寂しさを白黒版画で見事に表現しています。こちらの作品は展示販売いたしております。ご来館の際にご覧ください。(N)

 

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小崎侃木版画「鉄鉢、散りくる葉をうけた」