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フェルメール 私からの視点

2007-09-08

国立新美術館で『フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展』(9月26日~12月17日)が開催され、フェルメールの代表作のひとつ「牛乳を注ぐ女」が日本初公開されるそうです。フェルメール作品は、世界中にわずか30数点しか現存せず、世界各国に散らばってしまっています。その代表作品を日本国内で鑑賞できることは嬉しいことです。

ヨハネス・フェルメールは、日本でもゴッホと並ぶ人気を持つ17世紀のオランダの画家で、その作品は世界中の人々から性別を超えて広く愛されています。日常的な題材を象徴的な美に高め上げ、見る人を引き込まずにはいられない寡黙な世界観、そして技術的な完成度の高さなどに加え、残されている作品点数の少なさが人々を魅了する要因になっていると思われます。その一方で、贋作騒動や盗難劇、ナチスの略奪の過去など、知的好奇心を強くそそる背景を持ちます。

数年ほど前には、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」というシンプルな作品から小説や映画が生み出され、世界中のファンを魅了し日本国内でも話題を呼びました。 フェルメール作品は、日本人に対してアピールする特別な要素を持っていると思います。というのも、西洋美術鑑賞にはいくつかのハードルがあると感じますが、最大のハードルはキリスト教に対する理解力の問題だと思います。ダヴィンチにしろミケランジェロにしても、宗教画や宗教的歴史画であったりというのが大半です。仏教が主体の日本人は、キリスト教の歴史的背景をよく知らないため、西洋史や西洋絵画を理解するには根本的なリスクを伴います。しかし、フェルメール作品の大部分は宗教画的意味があったとしても日常の何気ない情景を描いているので、私たち日本人の感覚にも近づきやすいものになっていると考えられます。

また、1年程前「フェルメール 全点踏破の旅」(朽木ゆり子著)という文庫本を読みました。この著者は世界に散らばったフェルメール全作品を踏破する旅に出ます。私は、フェルメール作品はロンドンのナショナルギャラリーで1点とパリのルーブル美術館で1点の計2点しか観ることができておりません。絵画を始めとする芸術品は本物を見ることに価値があります。どんなに良く出来た複製品であっても実物にはかないません。特定の絵を見るために国内や外国の美術館へ旅をするというのは、美術を愛する人間には大きな喜びです。私もいつかフェルメールの全点踏破の至福の旅に出かけたいと願っています。

フェルメール 「真珠の首飾りの少女」