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橋口五葉について~(8)~

2008-10-21

『耶馬渓』と同年に発表した『化粧の女』は、浮世絵で大首絵と呼ばれる上半身をクローズアップさせた作品ですが、様式化された過去の浮世絵版画とは違い、写実性を高めた個性的な顔立ちに近代美人画の特性が見られ、より上品で清らかな美しさをたたえています。

髪の毛は、生え際・まげ・おくれ毛など江戸浮世絵のようにパターン化せず写実的で、髪の毛一本一本や白粉を塗る刷毛先の繊細さ、着物の柄などの精緻さからは、彫師・摺師の高い技術が見られます。そして、左手に持つ鏡の模様や刷毛を持つ右手にはめた指輪から、大正のモダンさが感じられます。

また、一般的な浮世絵美人画サイズより大きい特大版(55.5×39.0cm)で、上質の和紙を使い、顔料には日本画の絵の具を使用、背景には雲母摺りの効果を入れ、出来得る限りの工夫をしています。こうした最高度の技術を存分に取り入れ完成させた『化粧の女』は、浮世絵以来の伝統技術の一つの最高到達点と言える美人画となりました。

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『化粧の女』 1918年(大正7年)