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橋口五葉について~(10)~

2008-10-25

1920(大正9)年、五葉はこれまでに構想し素描してきた作品を一気に制作します。完成した版画は『盆持てる女』『紅筆を持てる女』『髪梳ける女』『長襦袢を着たる女』『夏衣の女』『浴後之女』の6点の美人画、『神戸之宵月』『京都三条大橋』『雪の息吹山』の3点の風景版画、『鴨』の花鳥画の計10点であり、五葉全版画の8割がこの年の制作でした。後年「五葉奇跡の大正9年」と呼ばれます。

しかし、この年の暮れに流感にかかり翌1921(大正10)年、一時小康を得ましたが中耳炎・脳膜炎を併発し2月24日に死去しました。

数十枚の下絵や、主版、色指しまで準備されていた作品もある中、完成を見なくして急逝したため、後に制作途中の作品を甥の橋口康夫(版画家・西洋画家)が監督し、『着物をたたむ女』『温泉宿』『夏装之女』『顔を洗う女』などを完成させました。

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『鴨』  1920年8月

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『浴後之女』 1920年7月