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橋口五葉について~(12)~

2008-10-29

大正9年6月制作の『夏衣の女』は、全体の構図や女性のポーズが完璧で、黒を基調とした色の組み合わせの素晴らしさ、凛とした表情、結った髪のつやつやとした質感など、全てにおいて貫禄ある出来上がりの作品です。着用している薄い絽の生地を通し裸体がぼんやり透けていますが、これは女性美の一表現方法として歌麿が好んで用いた「ごま摺り」という技法を用いています。「ごま摺り」とは、布の質感を表す際に多く用いられる技法で、一度摺った上に馬連を弱く当てて色を重ね、細かいムラのあるざらざらとした絽や紗の薄物の着物地の表現に最適です。

墨版や色版を重ね摺る木版画の技法を最大限に生かした魅力的な美人画は、知れば知るほど深い感動を与えてくれます。

このモデルは『化粧の女』と同じ中谷つるで、他にも『夏衣の娘』『温泉宿』のモデルを務め五葉がもっとも信頼をおいていたモデルです。

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『夏衣の女』

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『温泉宿』

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『夏衣の娘』