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浮世絵について

2007-09-23

絵画は、中世までは絵巻や掛け軸といった形態が主でしたが、近世に入ると本の体裁をとるものが増えてきます。「憂世」が「浮世」と変わり、内容も仏教的なものから市井風俗を描くものへと変化していきます。浮世絵版画もその時代に応えるように鑑賞を目的とした内容へと変わっていきました。

浮世絵版画の創始者と言われる『菱川師宣』は黒摺絵と言われる黒一色で描いた作品を作り出します。その後、「丹絵」「紅絵」「紅摺絵」と数色で版彩するものへと進展し、江戸中期になると『鈴木春信』が「錦絵」と呼ばれる錦の織物のように美しいフルカラーの浮世絵を制作します。そして、清長、歌麿、写楽、北斎、広重などの優れた絵師の登場で、浮世絵黄金期を迎えることになるのです。清長の「八頭身美人」、歌麿の「大首絵」、写楽の「役者絵」、北斎や広重の「風景画」などは、江戸文化の最先端を闊歩し、浮世絵を絵画芸術の高い水準へと押し上げました。それに伴い、浮世絵芸術は欧米の人々をも魅了し、ゴッホをはじめとするフランス印象派の画家たちに大きな影響を与えました。

明治以降に海外に流出した浮世絵の膨大さは、そのコレクションで有名なボストン美術館やフーリア美術館を訪問すれば一目瞭然です。特に浮世絵肉筆画は、一枚しかないので、海外の美術館に行かなければ鑑賞出来ません。ちなみに浮世絵といえば多色摺の木版画(錦絵)のイメージが強いですが、肉筆画ももちろん浮世絵です。

今年は、ビクトリア アンド アルバート美術館所蔵の初公開浮世絵名品展、プライスコレクション展やギメ東洋美術館展が日本で開催されて、世界に誇る浮世絵肉筆画に接する機会が提供されたのは、嬉しいことでした。

現在当館では、所蔵作品の中から、広重の東海道五十三次などの原画も常設展示いたしております。どうぞ、本物の江戸の文化に触れてみてください。

鈴木春信 「雨中夜詣」

喜多川歌麿 「高島おひさ」