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橋口五葉について~(15)~

2008-11-04

次に、大正新版画運動に参加した風景画の川瀬巴水と簡単に比較してみたいと思います。

川瀬巴水は、鏑木清方の勧めで五葉も洋画を学んだ白馬会洋画研究所に入り、岡田三郎助の指導を受けた後、清方に入門しています。巴水は、伊東深水の「近江八景」の木版画に影響を受けて、大正7年に渡辺庄三郎の元から「塩原おかね路」などの塩原を題材とした三部作の風景版画を発表しました。浮世絵版画とは違う新しい木版の効果を引き出した洋風表現による風景画で、巴水の作品の中でも特に優れたものです。

彼は新版画の樹立を目指して、情感溢れる静寂な趣を湛えた風景版画を多く制作して、「新版画」を代表する風景版画家となりました。巴水の作品は、売り出し価格は初め2円、その後3円であり、五葉の風景版画より安価ではありましたが、巴水の四季それぞれの詩情豊かな表現は、五葉の「耶馬溪」や「雪の息吹山」などと比較して見ても、同じように完成度の高い素晴らしい作品に仕上がっています。

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橋口五葉 『京都三条大橋』

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川瀬巴水 『肥前雲仙嶽』