橋口五葉について~(16)~
2008-11-06
新版画の風景画家・吉田博は、23歳で初の渡米後、ヨーロッパ・アメリカ・アジア各国を回り水彩画・油絵・木版画の作品を制作しています。明治神宮奉讃会へ納めた千枚の掛物絵をつくったのが版画に入るきっかけとなり、1920(大正9)年から渡辺庄三郎の勧めにより版画制作を始め、翌年には「牧場の午後」を発表しました。しかし、吉田博は五葉と同じく版元の意向が強く反映されることを嫌い、版元から離れ自らの版画工房を持ち版画制作を行うようになります。
木版画作品数259点の中では、自然風景・山岳を描いた作品が多く、写実の画業を示しました。五葉の風景画と比較すると、吉田博の作品は浮世絵版画を抜け出し、ますます西洋的な表現が顕著になり、近代的風景木版画を制作しました。
橋口五葉 『神戸之宵月』
吉田博 『瀬田之唐橋』