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橋口五葉について~(18)~

2008-11-12

五葉の生きた明治・大正時代は、過去の浮世絵版画の影響を多分に受けた印象派やアール・ヌーボーなどのヨーロッパ世紀末の新しい美術が、日本国内に積極的に受け入れられた皮肉な巡り合わせの時代でもありました。

五葉はそうした時代背景の中で、過去の浮世絵の伝統を吸収し取り入れながら、浮世絵を現代化し新しい独自の趣味を出すことに成功しました。日本女性を最も美しく表現するためには木版画が一番適していて、女性の肌を最適に表現するのは和紙の他はないということを、浮世絵を研究・復刻することで実感し、五葉ならではの身体表現や香気表現を生み出しました。

41年間の生涯で残した大判版画は13点と少ないですが、本の装丁、浮世絵研究や版画制作に全生命を燃焼させた五葉は、生涯女性美を追求し続け女性美表現の最高到達点を極めた大正を代表する「美人版画家・橋口五葉」と言えます。

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『長襦袢を着たる女』