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小鳥たちを見ながら

2009-03-06

美術館の庭へ遊びに来る小鳥たちを見ていて思い浮かべる浮世絵に、奇抜で超個性派の伊藤若冲の鶏や広重の鴨などの作品があります。浮世絵のジャンルの一つに「花鳥画」と呼ばれるテーマがありますが、これは花や鳥だけではなく小動物や虫、魚介、植物などを描いた画も総称しています。また、浮世絵独自の主題ではなく古来日本の絵画や工芸における主要な伝統的テーマです。

浮世絵師が手がけたものとしては、江戸中期過ぎの喜多川歌麿の『画本虫撰』を代表に、色摺の豪華な絵本の中に素晴らしい花鳥画が現れてきます。しかし、花鳥画の絵本は一部の趣味人たちを対象として制作量を限定し高価で販売できるよう企画制作されたと言われています。

江戸後期には、葛飾北斎や安藤広重などが花鳥画作品を数多く手がけました。特に、広重は「短冊判」と呼ばれる細長い判型を主として、浮世絵ならではの構成と描写で個性ある作品を描き、庶民たちも伝統的な花鳥画を身近に楽しめるようになりました。

花鳥画は日本人特有の美意識が作り出し、今では世界中の人々の心を捉えています。当館でもいつの日か花鳥画展を行いたいと考えております。

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広重 『おしどり』 東京国立博物館蔵

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広重 『冬椿に雀』 東京国立博物館蔵