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歌麿の「鮑取り」

2009-05-21

今、常設展示している作品の中に、喜多川歌麿の「鮑取り」(大判錦絵3枚続き・復刻版)があります。

この作品は、江ノ島の海女を描いたもので、寛政期の歌麿全盛期の美人様式は確立されていませんが、浮世絵が描かれて以降初めて全裸に近い裸婦図の美人画として注目されています。また、描いた女性の輪郭線に、墨色ではなく肌色を用いた独自の色彩表現は高い評価を得ています。

歌麿は、人間にはそもそも線など存在しないと描線に特別なこだわりを見せ、後に驚異的な観察眼により「空摺(無線摺)」の手法や色面のみで背景と人物を描き分け、最高の美人画を完成させます。

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シカゴ美術館蔵(天明期頃=1781~89)