浮絵
2009-09-27
浮絵とは、西洋の遠近法を取り入れた浮世絵のことで、手前に描かれたものが浮き出したように見えるため浮絵と呼ばれます。それは江戸の人々にとって見慣れない珍しい絵で、浮世絵師たちは現実には有り得ないほどに極端に遠近を強調し不思議な感覚を売り物にしました。
浮絵を最初に手掛け大々的に売り出したのがアイディアマンとして知られる奥村政信で、自ら「大浮絵」と称した横70cmもの大きな画面に、歌舞伎座や吉原遊郭、越後屋店先などの様子を描いて世の人々を驚かせました。
その他に、浮絵で代表されるのは歌川派の祖・豊春で洗練されたより自然な形の遠近法を取り入れた浮絵を残しています。
しかしながら浮世絵でこの極端な遠近法は定着せず、その後は日本絵画の伝統である平面的で奥行き感や広がりを持った北斎や広重の風景画が好まれました。
奥村政信「駿河町越後屋呉服店大浮絵」 ボストン美術館蔵
歌川豊春「浮絵 新吉原惣仕舞之図」 東京国立博物館蔵