野口 典男作品 「有明湾の朝日」
2010-12-18
諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の開門を命じた裁判に対する菅総理の対応判断は、全国的な話題となっております。
私の自宅の2階からは有明海と橘湾の両方の海を望むことができ、ある意味で有明海とは縁深い場所に住んでいます。が、農水産業に直接従事していないので総理判断の是非は良くわからない、というのが正直なところです。
これまで、多くの芸術家たちが有明海を題材としたさまざまな作品を発表しています。それらのどの作品にも有明海の干潟の自然のままの長閑な風景の魅力があふれています。当館常設展示の侃先生の作品にも版画や掛け軸などがあります。今日は所蔵作品の中から侃先生とは違う作品を一つご紹介したいと思います。
長崎出身の画家・野口典男さんが描いた「有明湾の朝日」(油彩)は、両親が諫早の画廊で一目見て気に入った作品です。そこには有明海の日の出間際の静かで穏やかな風景が描かれていて、太陽がこれから燦々と輝きを増し有明の海一面とそこに暮らす人々を照らし出すであろうことを予感させます。東京住まいの野口さんが、潮受堤防閉め切り前に変わりゆく運命の有明海の姿を一枚の絵に写し取り残したかったのではないか、との想いが伝わってくるような作品です。
野口 典男 「有明湾の朝日」 (1996(平成8)年9月)