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浮世絵版画から新版画へ

2008-06-15

当館では、現在「最後の浮世絵師と新版画の作家展」(~7月27日まで)を開催中です。

幕末から明治、大正、昭和へと時代の変化が著しい中、版画の世界でも大きな変化が見られるようになります。開国に伴い、欧米の文化や技術が伝わってくると、浮世絵は新聞や写真、石版画などの新技術に押されて衰退していきます。江戸時代から長期に続いてきた浮世絵の歴史は、日清の戦争絵を最後としてほぼ終焉を迎えます。

しかし、欧米では日本の美意識への憧れが強まり浮世絵の評価が高まるという逆転現象の中、日本国内では2つの版画運動が起こります。一つは自画・自刻・自摺の「創作版画運動」、そしてもう一つが浮世絵の復興と近代化を目指した「大正新版画運動」です。

大正新版画運動は、浮世絵形態の絵師・彫師・摺師の三者分業型で浮世絵の伝統を受け継ぐ木版多色摺り技法を生かした上、新しい芸術風を吹き込んだ日本版画界のルネッサンス運動ともいうべき大正から昭和にかけての版画運動です。

今回は、最後の浮世絵師と呼ばれる「小林清親」と、新版画運動の作家で「高橋松亭」「石川寅治」「小原祥邨」「川瀬巴水」の計5名の作品を展示し、浮世絵版画の最終章から新版画への変遷を鑑賞できる展示内容となっております。

温故知新を繰り返しながら発展してきた版画芸術は、時代を超越する高い芸術性が滲み出ていて、年代の経った作品から私達現代人に“新しさ”を感じさせてくれます。

開催中の企画展をどうぞ楽しんでください。

小林清親 『東京新大橋雨中図』