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ルオーと宗教画

2008-11-26

雲仙ビードロ美術館の副館長・生駒先生からお誘いを受け、同館で開催中の『ルオー「ミセレーレ」とキリシタン殉教展』(~30日)を鑑賞に出かけました。

これまで、宗教画で有名なルオー作品は何度か観たことがありますが、全体的に暗い色彩と太い描線に苦手意識を感じて、今年の夏上野の森に出かけた際も「ルオー展」が開催されているのを横目に見ながら通り過ぎてしまいました。

ビードロ美術館の特別展では、副館長コレクションのルオー作品4点と、併せてキリスト教関係資料が展示されています。ルオーは初期の頃、娼婦やサーカスの道化師など貧しい暮らしの人々を好んで題材としており、また彼は敬虔なカトリック信者でしたが、伝統的な聖書に基づく宗教画を否定し、人間の持つ悲しみや苦悩を社会の底辺の人々を通して表現しました。

今回の特別展の「ミセレーレ」とは、ルオー中期の版画集の標題で、旧約聖書の一節の冒頭に登場するラテン語の言葉“憐れみたまえ(ミセレーレ)”から採られたそうです。地上のあらゆる災厄に苦しめられている人々の姿を、深い宗教的感情に基づいて黒白銅版画で明暗を描き出しています。

24日には長崎市で、カトリック信仰の模範となった人を「福者」の位に列するローマ法王庁の「列福式」が開かれ、世界中から信者ら約3万人が集まって盛大な式典が執り行われました。

また、これに関連して長崎歴史文化博物館では「バチカンの名宝とキリシタン文化-ローマ・長崎 信仰の証-」(~1月12日)が開催中ですが、現在、長崎県では世界遺産候補となっている「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の本登録を目指しており、列福式や関連展覧会などがその後押しとなるようにと期待されていますし、同時に私たちに強い関心を持たせています。

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『ルオー「ミセレーレ」とキリシタン殉教展』